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ニュースレター
ユーコンの風 Vol. 12
(2005年12月)
また、ユーコンに冬がやって来た。
ホワイトホース市
内では、例年10月には地面が雪に覆われる。今年の11月
は積雪量が多く、中旬頃にはクロスカントリー・スキーが楽しめた。
ホワイトホース市
内には、過去にインターナショナル・レースも開催されたクロスカントリー・スキー場がある。ダウンタウンから車で5
分。全長60キロ、難易度も様々なトレイルでのスキーが楽しめる。
ワックス・ルームで見る顔触れは様々。体
にピッチリのスキーウェアに身を包んだシリアス派から、ウィンド・ストッパーのジャケットとタイツを着たアウトドア派、服装なんてなんでもありのレジャー
派、、、。週末には、子供たちのためのスキー・レッスンも行われており、下は3/4歳からの子供たちが、短いス
キーを履いてヨチヨチ滑る姿も見られる。私は、天気のいい日には平日のランチ・タイムに滑りに行くこともあるが、日中には驚くほどの数の「ご年輩」の方々
を見かける。彼らには、スピードなんてもちろん関係ない。スキーを履いて、ゆっくり森の散策とおしゃべりを楽しんでいる。なんとも健康的で、ほがらかな姿
である。
九州出身の私は、ウィンター・スポーツに
はあまり縁なく育った。ユーコンに移住してから、まず犬ぞりを学び、5年ほど前にクロスカントリー・スキーを購入
した。初めのころは、それこそレジャー派で、テクニックなんて関係なし。ただ森のトレイルをゆっくと歩く/滑ることを楽しんでいた。しかし、2年前に少し
大きな病気をしてから、体力回復のためにクロカンに真剣に取り組むようになった。ちょっとしたテクニックを学ぶだけでスピードも上がり、もっと色んなトレ
イルを滑ることができるようになった。相変わらず、私にとってアウトドアの技術とは自分をもっと自然の奥深い場所に連れて行ってくれる手段であるだけに、
その進歩はとても嬉しいことだった。
クロカンは、全身運動であり、周りの景色
を楽しみながらのエクササイズには絶好のスポーツだと思う。
ユーコンの冬は、長い、寒い、暗い。だか
ら、趣味がなければ、それはとてもつまらない季節になってしまう。スキーを始めてから、私の冬の過ごし方は随分変わった。
昨年は、アルパイン・ツーリング・スキー(日本では、山スキーと呼ぶらしい)も購入し、バックカントリー・スキーにもチャレンジしている。2年前の冬に、初めて友人
にカナダとアラスカ国境付近でのバックカントリー・スキーに連れて行ってもらって以来、すっかりその世界に惚れ込んでいる。

この圧倒的な自然のなかでは、人間の姿なんて、本当にちっぽけ
私がスキーに興味を持ち始めると、日本の
スキー大好きの友人が喜び、彼女がもう使わなくなったスキー板をプレゼントしてくれた。その後、別の友人が、「日本のスキー場も体験してみたい」という私
を北海道のニセコに連れて行ってくれた。東京でス
キー雑誌の編集をしている友人の雑誌を読み、「スキー・バ厶」だ、「フォール・ライン」だといった、ちょっとカッコイイ専門用語も学んだ。まだまだ下手く
そだが、はまっているのは確かで、イソイソとスキー場に出かけて練習する私を、ユーコンの友人たちも応援してくれている。「スキーに興味がある」というだ
けで、話題も交友関係も驚くほどに広がった。これは、ちょっといい発見だった。

ローラ、テュウーキーとご満悦の記念撮影
ユーコンには、最高のバックカントリー・
スキーの舞台が数多くある。その真っ白な世界に感動し、カッコ良く滑る自分の姿を想像しては、スキー場に通うことを楽しみにしている自分がいる。

ホワイト・パスで友人のローラとバックカントリーを楽しむ
ユーコンのバックカントリーのベスト・
シーズンは3月から4月。その頃に、またその話を書きたいと思う。

バックカントリーでは、静かで、純粋な世界に出会える
独り言
9月、日本か
ら叔父と叔母が訪ねてきてくれた。二人にとっては、2度目のユーコンである。普通カナダといえば、まずバンクーバーやバンフといった有名な観光地を経験す
るのだろうが、私の家族にとっては、カナダといえば「ユーコン」なのである。
好奇心旺盛なこの叔父と叔母の今回の目標
は、「北極圏到達」であった。デンプスター・ハイウェイを走って北極圏に行こうか、、、と考えていた私の頭に突然ひらめいたのは、「オールド・クロウ」。
ユーコンの北西部、北極圏境の遥か北にある、人口250人ほどの小さな先住民(ネイティブ)の村である。ここに行
くには、道路がないため、ホワイトホースから飛行機で飛ぶしかない。9月下旬はカリブーがオールドクロウに姿を見せ始める季節であり、運がよければ、オー
ルド・クロウに沿って流れるポキュパイン川を横切るカリブーの群れを見ることができるかもしれない。
ちょうど、今年から私の友人がオールド・
クロウに引っ越し、「ヴァンタット・グウィッチン」という部族の政府機関で仕事を始めたので、彼らを頼り、私たちはオールド・クロウに向かった。

オールド・クロウへのアクセスは、飛行機のみ
オールド・クロウでの滞在は、ユーコンに10年暮らす私にとっても、日本から来た叔父と叔母に負けないくらい鮮明で、暖かい思い出になった。

オールド・クロウの町のサイン
村を歩くと、捕ってきたばかりのムースを
後ろに載せた4駆のバギー車が横切る。家々の前には、誇らしげにムースやカリブーの角が所狭しと飾られている。庭
には、スモーク中のサーモン。皆、私たちを珍しそうに見て、少し照れながらも手を振ってくれる(オールド・クロウを訪れる観光客の数は、年間50人前後だ
という)。ホワイトホースでは、まず見られない光景である。

オールド・クロウでは、4駆のバギーが大活躍。空港へも、このバギーで迎えに来てくれた

町のあちこちに、ムースやカリブーの角のディスプレイが見られる
友人が、ポキュパイン川をモーターボート
で案内してくれた。「ヨシ、ネイティブのハンティング・キャンプに寄っていくか?」。キャンプに到着すると、ネイ
ティブの初老のカップルが突然の客を暖かく迎えてくれた。キャビンの天井に、ムースの肉が干されている。薪ストーブの上では、ムースの足を煮込んでいる。
血の味しかしない、その干し肉をかじりながら、話をする。ネイティブの人たちのジョークのセンスは抜群。私の叔父が外科医だと知り、ムースのすね肉を食べ
ていた叔父に向かって、「外科医の割りにはナイフ使いが下手だなあ」とからかって、大笑いする。彼らは、オールド・クロウに住んでいるが、カリブーがやっ
てくる季節になると、このキャビンに滞在して、カリブーを待つ。今年はまだ、カリブーの姿を見ていないという。別れ際にお礼を言うと「日本人は親切だから
好きだ」と言ってくれた。
ユー
コンでの旅を終えた後、叔父と叔母と一緒にバンクーバーに行った。大きなショッピング・ストリートを歩き、賑やかな音楽を聞き、町に溢れる様々な色を見て
いると、数日前まで滞在していたオールド・クロウの、そのシンプルさが懐かしく思えた。同じカナダでも、これだけ違う世界がある。一生のなかで、オール
ド・クロウのような場所を訪れることのないカナダ人もたくさんいるだろう。この瞬間に、やがてやって来るカリブーを待って、川沿いに建つ小さなキャビンで
生活している人たちがいるーそういう世界を知り、体験できている自分は本当に幸運だと思うとともに、海を越えた日本から来た叔父と叔母と、その経験を共有
できたことを、とても嬉しく思った。
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